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RGB4
[a fragment Image of works by Ryu Endo + Satoshi Fukushima]









 RGB4
- Relinquish Gloomy Brass -

 1日限りの展示・上演・公演イベント、私達にとっての通称 "RGB" は、2017年から1年に1回のペースで開催され、これまでに3回の公演が行われてきました。当所より作曲家・福島諭と映像作家・遠藤龍、造形作家/デザインとして高橋悠+高橋香苗(Tangent Design Inc.)の3組(4名)を軸に制作・発表を行ってきており、この関係は現在も続いています。互いの表現ジャンルは異なるものの、同じ土地に暮らし様々な節目で交流を保ってきた3組によって、毎回の共通テーマに対して各組がそれぞれの分野で制作、そして可能性があれば領域横断的に共作も試みるという姿勢を強いてきました。これまで3回の公演を通した成果のひとつは、この発表が互いの表現領域との関わりを意識することの機会として機能していたということ、翻って自分の表現領域では前提となっているものが必ずしも表現における必須の条件ではないことを改めて感じ直す機会となっていたということかもしれません。また同時に、それ故に表現が成り立つ領域には一方では何かしらの領域の欠如が伴うものでもあろうということに意識的になり始めているところでありました。

 そのような状態でしたので今後ももう少しこのシリーズは継続していくべきだろうとメンバーの各人も感じ、当所は2020年も第4回目を例年通り開催しようと検討していました。しかし今春から日本国内でもCOVID-19の影響が広がる中で通常通りの展示・イベントとしての開催はやはり難しいのではないかと考えるようになりました。メンバー間でもメール等でのやり取りを行い、何か別の方法がないか、オンライン展覧会での開催なども検討しましたが、やがて議論は収束し、そもそも発表・展示を前提に制作を考える前に何か他に重要な観点を改めて考え直すところから始めるべきではないかという方向へ転化していきました。

 その意味で、今年の"RGB"はこれまで成果発表の目標・前提としてきた「展示の機会」自体を放棄した事になります。"RGB"がもしこれを肯定的に捉えるとすれば、失われた領域がある所には表現が生まれると(敢えて)仮定することにあるのかもしれません。それが例え不特定の他者へ向けたものでないとしても、、いいえ、今の気持ちとしてはむしろ他者へ向けた作品を制作するというよりは、互いの対話の中で見つけられたものにまずは注意を払い続けるという態度、心の距離を紡ぐ時間を持続させることに集中しているとも言えるのかもしれません。メンバー間の各人が持つ領域の少し外か内にあるものを、互いに目を凝らして探し続けるような態度です。

 遠藤龍と福島諭は2020年5月から月に1枚のペースでデジタルデータの静止画を文通のような交換形式を取り入れて制作を始めています。2020年の8ヶ月分のやり取りは試作扱いとしますが、これを踏まえてこれらを展示や別の表現へ変容させることはできないか高橋悠+高橋香苗(Tangent Design Inc.)とも可能性を探っているというのがここ最近の進捗です。

 不特定多数の他者へ向けたものではない、としながらもこうした文章を公開するにあたっては昨今のネットワーク、オンラインミーティングやSNSでは埋められない領域がやはりあることを強く意識した1年でもあったからです。現実世界では外出も極力少なくするような生活が続いています。今後もまだこの状況は大きくは変わらないかもしれません。長引く中で、互いの繋がりや何か人としての根源的な部分で共鳴する瞬間・安心感を得ることからはやはり少しずつ遠のいているようにも感じています。

 一般論ですが創作において孤独な時間は必要です。しかし今、まず僕らは互いがあまりにも孤立しないための努力はするべきかもしれないと思うようにもなっています。今回のような文章が全ての人の共感を得られるものではないことも分かっていますが、この小さな声をテキストにすることは、意識の優越を超え、心の距離・出会いについて今一度立ち止まって考える事、いつの間にか見えにくくなってしまっている関係性自体へ呼びかけることでもあります。

 2020年12月25日 RGB4











(第4回目となるはずだった今年の"RGB4"は今後どのような形でも展示/発表は行わず、上記の記述のみとさせていただきます。メンバー間では引き続き次回RGB5へ向けての対話を続けます。また何処かで会える日まで皆さんどうぞお元気で。)