concept, programming and composition: Satoshi Fukushima
“ 楽器の象徴性・音色から受ける印象とは、個人的なスケールで見れば極めて小さく歪な主観でしかなく、本来孤独な領域である。しかし、その音色が選ばれ現在に至る理由は、その楽器に関わってきた過去の人々の主観の総体という途方もなく大きな規模感や、それに費やされた長大な時間の関わりの中に潜んでいるはずである。そこには圧倒的な量の主観が膨大な量と時間をかけて関わり研ぎ澄まされ、抽出され、結晶化した客体が宿っている。
小さく歪な個の抱く印象が大きな流れの一部となって、音の、この先の在り方に小さな関わりを持つ可能性について。選ばれた音色と孤独な主観の関係。ここには決して交わらない決定的な断絶があるにも関わらず、極めて大きな時間のスケールで見た場合には長大なフィードバック構造が準備されているようにも感じられる。過去という大河から流れ着いた音色に、極めて小さな個体は決定的な現在において巡り会うはずなのだ。そのような決定的な現在とは、実在と虚、過去と未来が結ばれる一点である。本来断絶されており交わることのない領域は互いに何かが欠けているが故に、そこに美や表現が宿るのだとしたら。そこには閉じた互いの領域に風穴を開けるような「裂け目」の存在が求められる。
逆説的かもしれないが「決別」という言葉が内包するもの、いまここにあるものからの断絶を決意する時にもまた、その広がり行く距離はやがて「裂け目」となる。決定的な現在において「裂け目」自体の向かう方向は問題にならない。それは入り口であり出口でもある。”(楽譜解説より抜粋)
【楽譜】
A5サイズ 34ページ
発行:2019年12月01日初版
著者:福島諭
発行元:fish scores
【演奏】※以下の3回の実演を経て楽曲は更新された。
・初演:2018年9月9日(日)SALAMANCA HALL
" ぎふ未来音楽展2018 ガラ・コンサート&シンポジウム "
Trumpet: Ayaka Miura
Computer Operate: Satoshi Fukushima